大工仕事を契機に活動性が向上したアルツハイマー型認知症のケース

事例

アルツハイマー型認知症と診断され、内服治療している男性。脱水症で入院され、安静臥床による筋力・体力の低下から車椅子の移動になりました。病院でのリハビリ後、独歩でトイレ移動が可能になり自宅退院しました。認知症による意欲低下から生活全般に声掛けが必要で、入浴及び外出は介助が必要な状態でした。退院後の体調管理、生活機能の向上を目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回から開始し、脱水症の予防、生活機能の確認、ご家族の相談対応を行っていました。また、身体機能の強化、動作が不安定な歩行・入浴動作の練習を中心に実施しました。元々は畑仕事や日曜大工が趣味でしたが、家に閉じこもり、社会的交流はみられない状態でした。ご本人の心身状態を確認しながら畑作業や日曜大工の練習を開始し、作業課題の難易度や作業時間を拡大しました。

利⽤後の経過

福祉用具の活用することで入浴動作は自立し、歩行練習の継続で屋外歩行ができるまで体力は向上しました。大工作業を支援することで、自信や喜びを感じ、徐々に生活意欲が向上しました。自発的に散歩や大工作業に取組み、ご家族と畑仕事する機会が増加しました。屋外作業により心身機能は維持され、認知症による意欲低下が改善されました。

内服カレンダーを使用し、薬の重複内服が改善されたケース

事例

一年前から下痢と便秘を繰り返す腹部症状が出現していましたが、検査しても原因が不明でした。過去にトラウマとなる出来事があり、うつ病の既往がありました。常に食欲もない状態でした。高齢のため薬も自己管理できておらず、薬局にて残薬調整がされている状態であったため、訪問看護開始となりました。

⽀援内容

月に2回内服薬を管理することと、食生活の観察目的で訪問。同時に週1回のリハビリも開始になりました。認知力は維持されていたため、2週間分の薬をカレンダーにセットすることから開始しました。また食事の内容を聴取し、食事面の工夫をアドバイスしたり、訪問時は毎回体重測定を行いました。お話を傾聴する時間も設け、トラウマとなっている出来事や日常の困りごとや不満を聞くことで精神的なストレスを軽減するように努めていった。

利⽤後の経過

内服が正確にできるようになり、腹部症状も隔日→週1回→隔週と出現回数が減少しました。また食欲も維持され体重もキープされています。表情や言動にも変化が見られ、訪問開始時にはうつむき加減で笑顔も少なかったのですが、今では訪問中ネガティブな発言も減り、大笑いすることも多くなりました。

趣味活動を導入することで離床を促し生活範囲が拡大したケース

事例

日常生活活動の低下、転倒が増えたことから独居生活が困難となり、サービス付き高齢者住宅に入居しました。高血圧、両変形性膝関節症、両肩関節周囲炎などの既往歴があり、時間の見当識低下など認知機能の低下がみられていました。施設では自室から出ず、他者交流に対して消極的でした。車椅子レベルの生活でしたが、移乗動作時に自室で転倒することがありました。通所介護(デイサービス)に対して拒否があり、利用は困難でした。廃用症候群・転倒予防を目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、理学療法士と作業療法士が訪問しました。理学療法では活動範囲を拡大するため、自室から食堂までの歩行練習、運動療法を中心に実施しました。作業療法では離床時間を拡大するため、ご本人が得意としていた手芸を導入し、ご本人に手芸の先生の役割を担ってもらいながら関わっていきました。

利⽤後の経過

ベッド臥床の生活で、運動に対しては消極的でしたが、手芸作業を継続することで姿勢の崩れは改善し、座位時間は徐々に延長しました。運動療法に対して意欲的になり、歩行器を使用することで歩行距離が延長しました。施設職員に声掛け・見守りを協力頂き、1日2回は食事のため自室から食堂まで行くようになり、生活範囲が拡大しました。食堂に行くことが楽しみとなり、時間を自ら確認するようになりました。また、他者との交流が生まれ、日常生活が活性化されています。

脳卒中により活動機会が減少したが、訪問看護の介入により一人で買い物や散歩など屋外活動ができるようになったケース

事例

3年前に脳卒中を発症され重度の右片麻痺となりました。家屋内の移動は杖と下肢装具を使用されていましたが、不安感から屋外に出る機会は減少し、一人で外出することはなくなりました。屋外での活動性向上を目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週に1回、理学療法士が訪問しました。家屋内で麻痺側の機能向上練習と屋外歩行練習を集中的に実施しました。ご本人の希望を確認しながら、屋外散歩の中で近所のコンビニやドラックストアで買い物する機会を設けていきました。

利⽤後の経過

歩行練習の継続で屋外歩行の自信がつき、1人で散歩をする機会が徐々に増えていきました。散歩が習慣化され、買い物も1人で出来るようになりました。ご家族から日用品や食料を買いに行く役割を与えられ、週に3~4回は買い物に出掛けるようになっています。

リハビリ介入後、屋外活動の拡大、自助具の使用で書字動作を獲得したケース

事例

脳出血を発症し、右不全麻痺となりました。運動麻痺は軽度で粗大運動は可能な状態でしたが、重度の感覚障害がみられていました。屋外歩行は可能でしたが、立ち上がりや移動時にふらつきがあり、筋肉の緊張や疲労の出現により長距離歩行は困難な状態でした。 右手の失調症状(振える)、痺れや感覚鈍麻から巧緻動作が不十分で、書字動作は困難な状態でした。屋外歩行の安定化、書字動作を獲得することを目標に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、理学療法士、作業療法士の訪問を開始しました。屋外歩行の安定化、体力向上として、筋力強化や動的バランス練習、屋外歩行練習を積極的に実施しました。また、麻痺側の筋緊張を緩和しながら上肢の協調性や手指の巧緻性練習を実施し、生活場面で麻痺側上肢・手指が使用できるように動作練習しました。書字動作は自助具を作成・調整しながら練習し、課題の難易度を変更していきました。運動習慣を獲得できるように、自主リハビリの方法を説明しながら実施状況を確認しました。

利⽤後の経過

訪問看護を開始してから4か月後、体力の向上、屋外歩行の安定化から、通所サービスの利用を開始しました。運動は習慣化され、毎日4~6kmの散歩、自宅内で筋力トレーニングに取り組んでいます。動作時に麻痺側上肢・手指の筋緊張・失調症状を抑制できるようになり、生活場面で麻痺側の使用頻度は増加しています。書字動作は自助具を継続して使用する事で、実用的な書字動作を獲得しています。今後は余暇活動として庭作業ができるように支援していきます。

退院後リハビリを継続し、身体機能向上できたケース

事例

くも膜下出血を発症し、病院でのリハビリ後に自宅退院しました。退院時、左片麻痺、注意機能の障害あり、自宅内は車椅子介助で移動、寝返りや起き上がり等の基本動作、日常生活動作全般に見守り~軽介助が必要でした。構音障害、嚥下障害もあり、食形態の工夫やコミュニケーションに配慮が必要でした。退院後は「ご自宅での日常生活動作の安定」と「自分でできる事を増やす」を目標に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、看護師、理学療法士の訪問を開始しました。 自宅内の動線上で車椅子駆動練習を実施し、移乗や排泄、更衣などの動作練習を実施しました。転倒対策、生活動作の自立度向上として家具の配置変更や福祉用具を導入しました。また、短下肢道具の調整・作成を支援し、移動補助具を活用しながら歩行練習を実施しました。 思った言葉がスムーズに出ない事や身体状況・今後の生活に関する不安や解決方法に対する戸惑いに対して、十分に傾聴し適切な方法を提示しながら支援を継続しました。

利⽤後の経過

訪問看護を開始してから2か月後、起き上がりや立ち上がりが可能となり、見守り介助は必要ですが、歩行器で歩行できるようになりました。施設内職員と相談し、自室や食堂までの移動を車椅子から歩行器移動に変更し、歩行の機会を増やしていきました。開始から8か月後、歩行練習の継続により歩行器から杖歩行に変更し、施設内の移動は自立しました。屋外歩行は杖を使用して見守りで500m以上歩けるようになり、施設からタクシーを利用してご本人の自宅で過ごしたり買い物に行くことが出来るようになりました。

変形性膝関節症、認知症の進行から服薬支援を工夫したケース

事例

変形性膝関節症、軽度認知障害に対して、服薬指導、疼痛管理、日常生活の支援を目的に隔週で訪問看護を利用していました。内服薬は自己管理され、内服カレンダーを利用して服用していました。介入から1年後、膝関節痛の増悪、認知機能の低下から徐々に低活動になり、内服カレンダーを活用できず内服薬の飲み忘れが目立ってきました。

⽀援内容

訪問看護は週1回、健康状態の観察、内服薬の管理を目的に看護師が訪問しました。内服薬の自己管理は問題ないという自覚があり、他者の支援に対して拒否的でした。訪問看護で内服の必要性を説明しながら1週間の薬を内服カレンダーにセットすることで、確実に服用できるようになりました。次第に、膝関節痛や腰痛が増強したことで、内服カレンダーの設置場所まで移動することが億劫になり、服用を忘れることが増えてきました。また、1日分の内服薬を全てポケットに入れ服用を忘れることが度々ありました。経過を観察しながら、内服カレンダーの設置場所を変更し、日常生活の動線上に朝・昼薬を準備し、就寝直前まで過ごす場所に夕・眠前薬を準備することにしました。

利⽤後の経過

内服カレンダーの設置場所を動線上に変更することで、内服薬の飲み忘れは改善しています。ご家族は就労されているため早朝から夜間まで不在ですが、ご家族に協力を依頼することで、夕・眠前薬は確実に服用できるようになています。 訪問看護の支援を継続していますが、膝関節痛の増強、低活動による下肢筋力の低下から、立位や歩行は不安定な状態となり、内服カレンダーから内服薬を回収することが億劫になっています。また、回収した内服薬を散らかっているテーブルの上に置くことで飲み忘れがみられています。現在は内服カレンダーの活用を中止し、食事用テーブル上に目立つ仕分け用の箱を設置し経過を観察しています。訪問看護では身体機能や認知機能の状態に応じて、内服薬の管理方法を変更し確実に服用できる方法を検討していきます。

訪問看護の利用を契機に断酒に成功したアルコール依存症のケース

事例

X年アルコール依存症の診断を受けました。断酒に成功していましたがX+2年再飲酒し、X+5年に食生活の乱れから栄養障害となり1ヵ月間入院。退院後、居宅サービス(通所介護、訪問介護)を利用し、独居生活を送ることになりました。健康状態やアルコール摂取状況の観察、緊急時の対応、医療機関との連携を目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は看護師が定期的(週2回)に訪問し、全身状態とアルコール離脱症状の有無、生活環境や生活リズムの変化、確実に内服できているか確認しました。活動量の減少により、低体力、歩行バランスの低下がみられていた為、筋力強化や屋外歩行練習を実施し、運動の習慣化を支援しました。飲酒した場合はご本人が告白して相談できるように傾聴(信頼関係を構築)し、関係機関と情報共有しながら関わっていきました。

利⽤後の経過

訪問看護の利用により定期受診は継続され、体調を大きく崩すことなく経過しています。断酒会は再開できていませんが、訪問時に20~40歳代の飲酒量や楽しかった事を懐かしむように話す機会が増えています。訪問看護や居宅サービスの利用で断酒は継続でき、衣服や住環境、食事摂取量や生活リズムの乱れなく、健康状態は維持されています。訪問看護が定期的に運動介入することで、身体機能や生活機能の低下はみられていません。

要介護2から1年後、介護保険非該当、仕事復帰した症例

事例

パーキンソン症候群の60代女性。自宅階段から転落し、脊柱圧迫骨折加療後、四肢の痛みと著しい機能低下あり、神経内科で内服調整していました。意欲低下や傾眠傾向、下肢の脱力から転倒を繰り返し、生活機能の低下がみられていました。転倒予防、日常生活活動の向上を目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、理学療法士が訪問しました。疼痛緩和を図りながら筋力強化、バランス練習等の運動療法、歩行練習を積極的に実施しました。また、手指の巧緻性練習と同時に、家事や手芸などの趣味活動を誘導していきました。

利⽤後の経過

訪問看護開始から6か月後、歩行が安定し屋外歩行が可能になりました。以前取り組んでいた家事や手芸などの趣味活動に取り組むことが出来るようになりました。1年後、介護保険は非該当になり、訪問看護は終了しました。その後、短時間ですが仕事復帰されています。更に1年後、ご本人が車を運転して旅行することができたそうです。ご本人から「やりたいことができています」、「痛みはあるけど元気です」とお手紙がきました。

介護付き有料老人ホーム職員と情報共有を図り、日常生活動作の自立・外出が可能になったケース

事例

パーキンソン病を発症し、介護付き有料老人ホームに入所していました。ベッドからの起き上がり等の基本動作は困難であり、車椅子介助での生活をしていました。日常生活動作の介助量軽減、歩行での移動方法獲得を目標に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週に1回、理学療法士が訪問しました。筋ストレッチや筋力トレーニング等の運動療法を継続しながら、施設の住環境に合わせて基本動作や生活動作練習、移動補助具を活用しながら歩行練習を実施しました。介入から6か月後、体力の向上が図れた時点で階段昇降や外歩きなどの練習を導入しました。

利⽤後の経過

日常生活動作は車椅子レベルで自立し、調理活動などに参加するようになりました。移動補助具を使用することで階段昇降や屋外歩行が可能になり、退院後9か月目には通所サービスの利用を開始しました。発症後3年目の現在は構音障害、嚥下障害は改善みられ、食事は普通食に変更し、他者と積極的に交流するようになりました。歩行はT字杖+短下肢装具装着し1㎞程度の連続歩行が可能となり、ご家族と外出や旅行を楽しんでいます。