便秘症状に対して排便コントロールをご家族と共同で行うことで排便習慣が確立したケース

事例

パーキンソン病の70代男性。便秘症状から下剤を処方されていましたが、必要性を理解されず服用していませんでした。また、ご家族は長時間の座位保持は困難でトイレ排泄はできないと認識され、排尿は尿器、排便はオムツ内で排泄していました。 便秘症状の悪化予防と生活環境を整え、ご家族の排泄ケアの負担を軽減するため訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週1回、全身状態の確認、内服管理、排便習慣と排便姿勢の確立を目的に看護師が訪問しました。開始当初、毎日少量の排便ありますが、便の性状は固く、腹圧がかけられず、快適に排便できないことが解かりました。看護師の訪問頻度を週2回に変更し、排便コントロールの確立に向けて浣腸や座薬使用、腹部マッサージや摘便など便の排出を援助しました。ご家族と排泄ケアをしながら、排便について正しく理解できるよう説明・指導しながら、定期的な下剤の内服を依頼しました。その後、トイレで安楽・安全な坐位姿勢が保持できるように福祉用具を導入し、トイレでの排泄が習慣化できるように関わっていきました。

利⽤後の経過

内服が正確にできるようになり、腹部症状も隔日→週1回→隔週と出現回数が減少しました。また食欲も維持され体重もキープされています。表情や言動にも変化が見られ、訪問開始時にはうつむき加減で笑顔も少なかったのですが、今では訪問中ネガティブな発言も減り、大笑いすることも多くなりました。

小児麻痺、脳出血後遺症があり、人との関りが苦手で清潔保持困難であった利用者の入浴支援に至るまで

事例

人との関りが苦手で家族以外は受け入れの拒否があり、ひきこもり状態でした。全身乾燥・落屑・皮膚トラブル箇所が多数あり、足の爪は伸び切っている状況でした。ご家族は十分に清潔援助できず、月に1度自力でシャワー浴している状況で清潔は保持できていませんでした。脳出血後遺症(右片麻痺)、小児麻痺(左片麻痺)から日常生活動作や歩行は不安定な状態でした。訪問看護は体調確認、保清、リハビリを目的に開始しました。

⽀援内容

初回訪問時、皮膚状態の改善が必要な旨をご本人・ご家族に説明し週1回の訪問看護にて清潔援助を行う必要があることを伝えました。訪問看護に対して当初拒否的で、清潔援助は難しく介入を拒否していました。まずは足を温タオルで保清し、爪切りを行いました。次に爪は硬く足浴することで柔らかくして切ることを伝え、足浴を浴室で行うようにしました。看護師が訪問する場所を居間から浴室空間へ移行していきました。足の爪や皮膚状態は改善された為、シャワー浴の提案を行うと「入ってみたい」とご本人から希望され、シャワー浴介助へ移行しました。清潔を援助することで頭皮の乾燥や瘡蓋・発赤・湿疹、耳周辺にみられていた乾燥・亀裂・出血、全身の皮膚接触面の発赤・ただれ・出血などの皮膚症状は改善されました。その後「これから寒くなるから、浴槽に入って温まりたい。」と希望があり、福祉用具の選定・動作確認を理学療法士と行い、現在は浴槽にて入浴されています。

利⽤後の経過

皮膚の清潔が保たれ、皮膚症状は増悪なく経過しています。現在、週1回の訪問看護での入浴を心待ちにしています。毎回のように「本当にありがとうね!よくやってくれている。感謝している。」とご本人よりお言葉を頂いています。ご家族からは、「こんなに他人に心を開く人ではなかったし、看護師が来るようになってから変わった。清潔援助は家族もできなかった部分だったので本当に助かっている。」と仰ってくれています。

高次脳機能障害、運動失調を呈する患者に対して介入することで活動範囲が拡大し調理活動が可能になったケース

事例

小脳梗塞を発症した60代女性。発症から6か月後、医療機関でのリハビリ後に自宅退院しました。左上下肢の運動麻痺、失調症状(振える)があり、高次脳機能障害(注意、記銘、判断能力低下)がみられていました。日常生活活動は自立され、独歩での移動は可能でしたが、段差で膝折れが生じる場面あり、自宅の施錠忘れや自宅周囲の道が解らず迷うため一人での外出は困難な状況でした。刃物使用や火気使用は怪我や事故の危険性があるため、家事全般はご家族が行っていました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、理学療法士と作業療法士が訪問しました。生活動作の自立、主婦としての役割の再獲得を目標に機能面の介入(失調症状に対する機能練習)、高次脳機能障害に対する学習療法、未獲得の日常生活動作や家事動作・調理動作の練習、安全に屋内・外移動を行うための動作練習と指導を実施しました。

利⽤後の経過

6か月間の介入で失調症状は改善し、筋力と体力が向上しました。高次脳機能障害は残存していますが、動作練習の反復による学習効果から施錠忘れや道に迷うことがなくなり一人で活動できる範囲が拡大しました。現在は調理活動の自立を目標に献立立案、買い物、調理まで一連の流れを練習しています。また、交通機関を利用して友人に会いに行けるよう、近隣の交通機関までの歩行練習も行っています。

ガーデニングがしたいという希望を叶え、趣味活動再開をしたケース

事例

脳梗塞右片麻痺、医療機関から自宅に戻るため、機能訓練や生活動作の練習をしてきました。退院後、自宅で趣味のガーデニングを再開したいとずっと思っていましたが、ガーデニングに必要な動作練習はしないまま退院となりました。「何とかガーデニングができるようになりたい」と希望があり、リハビリを目的に訪問看護が開始になりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、片麻痺の機能回復と趣味活動再開の目的で理学療法士が訪問しました。機能訓練・生活動作練習と同時に、ガーデニング再開に向けて実際に庭に出てどのような作業をしていたのか詳しく聴取しながら動作を確認しました。立位では転倒の危険性があるため、座って作業するために、低い台への着座・立ち上がり練習、四つ這いで作業できるように膝サポーターを使用しながら動作練習を実施しました。また、庭まで安全に移動するため、屋外歩行練習を実施しました。

利⽤後の経過

ご主人に動作の見守りを協力して頂き、右麻痺側を補助手として活用しながらクワやシャベルなどの園芸用具を使用することができ、草取りや花を植えたり簡単なガーデニング作業もできるようになりました。現在は一人で庭に出る事ができるようになっています。 ガーデニング再開が、ご本人の自信になり季節ごとに庭の花を見て楽しんでいます。次は、ミシンを使ってみたいと意欲的に生活し、ご本人の活動を支援しています。

内服カレンダーを利用することで薬の飲み忘れが改善し、糖尿病治療薬の皮下注射を看護師が支援することで病状が安定したケース

事例

2型糖尿病・多発糖尿病性合併症から内服治療、糖尿病治療薬の皮下注射(トルリシティ皮下)を週1回していましたが、認知機能の低下により皮下注射の打ち忘れや内服忘れが目立つようになり、血糖値のコントロールが不良となっていました。血糖コントロールの改善・安定化を目的に訪問看護が開始になりました。

⽀援内容

訪問看護は週1回、体調管理、トルリシティ皮下注射、内服薬の管理を目的に看護師が訪問しました。内服薬の飲み忘れに対して、目のつく所に内服カレンダーに設置し、薬袋に日付けを記入してセットしています。訪問時、看護師が血糖測定しトルリシティ皮下注射を施行しています。訪問した際、ご本人・ご家族に対して、食事療法、運動療法、生活習慣の改善に向けて糖尿病教育を行っています。

利⽤後の経過

訪問看護が介入することで、糖尿病治療薬の皮下注射、内服の飲み忘れは改善しました。病院の定期受診を忘れる事があるため、受診日の朝に電話連絡することで確実に受診出来ています。糖尿病教育により食事や運動に注意して生活するようになり、血糖値は一定の範囲内にコントロールされています。

直腸癌にて人工肛門造設後のパウチ交換自立に向けた支援

事例

直腸癌にて人工肛門造設され、入院中にパウチ交換の練習を行ったが、「退院後に自分で行えるだろうか?、トラブル時の対処を出来るだろうか?」と不安を訴えていました。病院の医療相談員より、セルフケア確立に向けて訪問看護の依頼がありました。退院前に病院で退院時カンファレンスが開催され、ご本人・ご家族が不安に感じている内容の聞き取りを行い、訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

週に2回、人工肛門のパウチ交換に合わせて訪問し、実際の手技を確認しながらアドバイスを行いました。その他に、入浴後のケアの方法、便の性状や食事のアドバイス、皮膚トラブル時のケアの方法、便臭の悩みに対するアクセサリーの選定を行いました。

利⽤後の経過

訪問看護が介入することで徐々に不安が軽減され、訪問回数を週2回⇒週1回⇒月2回⇒月1回に減らしていき、人工肛門ケアに対する不安が無くなり、訪問看護の利用が終了となりました。人工肛門造設に伴うボディーイメージの変化に戸惑いがありましたが、一つ一つ不安解消に努めました。利用終了後に電話にて様子を伺いましたが、不安無くパウチ交換が行えています。

ご家族の協力・服薬カレンダーを利用し、高齢者の排便コントロールが確立されたケース

事例

脱水、心不全、腎機能低下、肺に水が貯留し、これまで3回入退院を繰り返していました。同居しているご家族の支援を受けながら生活していましたが、兎糞様の便(コロコロ便)で排便困難になることが多くなりました。下剤を内服し、排便困難時にレシカルボン坐薬を挿入していましたが、反応便がなくご自身での摘便や何本も坐薬を使用していることがありました。そのため、体調確認、排便コントロールを目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は体調管理、排便状況の確認、内服支援を目的に週2回の訪問が開始しました。訪問した際に腹部症状を確認しながら、排泄の支援(レシカルボン坐薬挿入、摘便など)を行いました。食事摂取量の低下はありませんが、水分摂取量が1日500ml以下のため、水分摂取の必要性を伝えながら1日1000mlの飲水を目標としました。自己管理が困難な様子がみられた為、ご家族に準備を依頼しました。内服薬は自己管理していましたが、残数が合わず、錠剤が床に落ちていることがありました。内服薬の飲み間違えや飲み忘れ、下剤量調節のため服薬カレンダーを使用し、ご本人・ご家族が解るように内服薬をセットしました。朝方や食事後に便意があるため、毎日レシカルボン坐薬1本を朝8時に使用し、便意促進や反応便の経過を観察しました。座薬を適切に使用する為、ご家族に管理を依頼しました。

利⽤後の経過

訪問看護を利用して1か月後、ご家族の協力で徐々に1日の水分摂取量が増え、レシカルボン坐薬を適切に使用する事ができました。服薬カレンダーを利用することで、下剤量の調節、内服が確立できました。レシカルボン坐薬を使用することなく排便が可能となり、便性状は兎糞様(コロコロ便)から普通便に改善しました。体調は安定し、排便がコントロールされ、経過を観察しています。

脊柱側弯症の改善から、外科的治療を逃れたケース

事例

10代の脳性麻痺の方、身体の成長に伴い側弯症が徐々に進行していました。整形外科の定期受診の際、背骨全体のレントゲン写真を撮り、主治医は側弯症の経過を観察しています。外科的手術が適応となる背骨の角度まで近づいてきてしまったため、どうにか進行を予防していきたいというご家族の希望があり、訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

週に2回、理学療法士・作業療法士のリハビリを開始しました。開始当初は訪問するスタッフに対し警戒した様子があり、なかなかリラックスできない場面もありましたが、小児リハビリの経験が豊富なスタッフの対応により、徐々に信頼関係が芽生え、全身のリラックスが可能となりました。時には遊びや課題を交えながら、体幹のストレッチとリラクゼーションを中心に実施し、側弯症に対するリハビリを行っていました。また、看護職員が月1回訪問し、健康状態の観察、ご家族の相談に対応していました。

利⽤後の経過

訪問看護を開始して5カ月が経過し、定期受診でレントゲン写真を撮った際、主治医から「以前より側弯が良くなっています。このままの状態であれば手術しなくていいですね。」とお話がありました。現在は側弯の更なる改善に向けてリハビリを継続し、本人のできることが少しでも増え、コミュニケーション能力の拡大に繋がるよう、道具の使用や言語以外(視覚や触覚)でのコミュニケーション方法の模索を行い、精神の発達に対して関わっています。また、通院の負担軽減、緊急時の対応を目的に、訪問診療の導入に向けて医療機関と調整しています。