小児麻痺、脳出血後遺症があり、人との関りが苦手で清潔保持困難であった利用者の入浴支援に至るまで

事例

人との関りが苦手で家族以外は受け入れの拒否があり、ひきこもり状態でした。全身乾燥・落屑・皮膚トラブル箇所が多数あり、足の爪は伸び切っている状況でした。ご家族は十分に清潔援助できず、月に1度自力でシャワー浴している状況で清潔は保持できていませんでした。脳出血後遺症(右片麻痺)、小児麻痺(左片麻痺)から日常生活動作や歩行は不安定な状態でした。訪問看護は体調確認、保清、リハビリを目的に開始しました。

⽀援内容

初回訪問時、皮膚状態の改善が必要な旨をご本人・ご家族に説明し週1回の訪問看護にて清潔援助を行う必要があることを伝えました。訪問看護に対して当初拒否的で、清潔援助は難しく介入を拒否していました。まずは足を温タオルで保清し、爪切りを行いました。次に爪は硬く足浴することで柔らかくして切ることを伝え、足浴を浴室で行うようにしました。看護師が訪問する場所を居間から浴室空間へ移行していきました。足の爪や皮膚状態は改善された為、シャワー浴の提案を行うと「入ってみたい」とご本人から希望され、シャワー浴介助へ移行しました。清潔を援助することで頭皮の乾燥や瘡蓋・発赤・湿疹、耳周辺にみられていた乾燥・亀裂・出血、全身の皮膚接触面の発赤・ただれ・出血などの皮膚症状は改善されました。その後「これから寒くなるから、浴槽に入って温まりたい。」と希望があり、福祉用具の選定・動作確認を理学療法士と行い、現在は浴槽にて入浴されています。

利⽤後の経過

皮膚の清潔が保たれ、皮膚症状は増悪なく経過しています。現在、週1回の訪問看護での入浴を心待ちにしています。毎回のように「本当にありがとうね!よくやってくれている。感謝している。」とご本人よりお言葉を頂いています。ご家族からは、「こんなに他人に心を開く人ではなかったし、看護師が来るようになってから変わった。清潔援助は家族もできなかった部分だったので本当に助かっている。」と仰ってくれています。

脊柱側弯症の改善から、外科的治療を逃れたケース

事例

10代の脳性麻痺の方、身体の成長に伴い側弯症が徐々に進行していました。整形外科の定期受診の際、背骨全体のレントゲン写真を撮り、主治医は側弯症の経過を観察しています。外科的手術が適応となる背骨の角度まで近づいてきてしまったため、どうにか進行を予防していきたいというご家族の希望があり、訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

週に2回、理学療法士・作業療法士のリハビリを開始しました。開始当初は訪問するスタッフに対し警戒した様子があり、なかなかリラックスできない場面もありましたが、小児リハビリの経験が豊富なスタッフの対応により、徐々に信頼関係が芽生え、全身のリラックスが可能となりました。時には遊びや課題を交えながら、体幹のストレッチとリラクゼーションを中心に実施し、側弯症に対するリハビリを行っていました。また、看護職員が月1回訪問し、健康状態の観察、ご家族の相談に対応していました。

利⽤後の経過

訪問看護を開始して5カ月が経過し、定期受診でレントゲン写真を撮った際、主治医から「以前より側弯が良くなっています。このままの状態であれば手術しなくていいですね。」とお話がありました。現在は側弯の更なる改善に向けてリハビリを継続し、本人のできることが少しでも増え、コミュニケーション能力の拡大に繋がるよう、道具の使用や言語以外(視覚や触覚)でのコミュニケーション方法の模索を行い、精神の発達に対して関わっています。また、通院の負担軽減、緊急時の対応を目的に、訪問診療の導入に向けて医療機関と調整しています。