内服カレンダーを使用し、薬の重複内服が改善されたケース

事例

一年前から下痢と便秘を繰り返す腹部症状が出現していましたが、検査しても原因が不明でした。過去にトラウマとなる出来事があり、うつ病の既往がありました。常に食欲もない状態でした。高齢のため薬も自己管理できておらず、薬局にて残薬調整がされている状態であったため、訪問看護開始となりました。

⽀援内容

月に2回内服薬を管理することと、食生活の観察目的で訪問。同時に週1回のリハビリも開始になりました。認知力は維持されていたため、2週間分の薬をカレンダーにセットすることから開始しました。また食事の内容を聴取し、食事面の工夫をアドバイスしたり、訪問時は毎回体重測定を行いました。お話を傾聴する時間も設け、トラウマとなっている出来事や日常の困りごとや不満を聞くことで精神的なストレスを軽減するように努めていった。

利⽤後の経過

内服が正確にできるようになり、腹部症状も隔日→週1回→隔週と出現回数が減少しました。また食欲も維持され体重もキープされています。表情や言動にも変化が見られ、訪問開始時にはうつむき加減で笑顔も少なかったのですが、今では訪問中ネガティブな発言も減り、大笑いすることも多くなりました。

変形性膝関節症、認知症の進行から服薬支援を工夫したケース

事例

変形性膝関節症、軽度認知障害に対して、服薬指導、疼痛管理、日常生活の支援を目的に隔週で訪問看護を利用していました。内服薬は自己管理され、内服カレンダーを利用して服用していました。介入から1年後、膝関節痛の増悪、認知機能の低下から徐々に低活動になり、内服カレンダーを活用できず内服薬の飲み忘れが目立ってきました。

⽀援内容

訪問看護は週1回、健康状態の観察、内服薬の管理を目的に看護師が訪問しました。内服薬の自己管理は問題ないという自覚があり、他者の支援に対して拒否的でした。訪問看護で内服の必要性を説明しながら1週間の薬を内服カレンダーにセットすることで、確実に服用できるようになりました。次第に、膝関節痛や腰痛が増強したことで、内服カレンダーの設置場所まで移動することが億劫になり、服用を忘れることが増えてきました。また、1日分の内服薬を全てポケットに入れ服用を忘れることが度々ありました。経過を観察しながら、内服カレンダーの設置場所を変更し、日常生活の動線上に朝・昼薬を準備し、就寝直前まで過ごす場所に夕・眠前薬を準備することにしました。

利⽤後の経過

内服カレンダーの設置場所を動線上に変更することで、内服薬の飲み忘れは改善しています。ご家族は就労されているため早朝から夜間まで不在ですが、ご家族に協力を依頼することで、夕・眠前薬は確実に服用できるようになています。 訪問看護の支援を継続していますが、膝関節痛の増強、低活動による下肢筋力の低下から、立位や歩行は不安定な状態となり、内服カレンダーから内服薬を回収することが億劫になっています。また、回収した内服薬を散らかっているテーブルの上に置くことで飲み忘れがみられています。現在は内服カレンダーの活用を中止し、食事用テーブル上に目立つ仕分け用の箱を設置し経過を観察しています。訪問看護では身体機能や認知機能の状態に応じて、内服薬の管理方法を変更し確実に服用できる方法を検討していきます。

内服カレンダーを利用することで薬の飲み忘れが改善し、糖尿病治療薬の皮下注射を看護師が支援することで病状が安定したケース

事例

2型糖尿病・多発糖尿病性合併症から内服治療、糖尿病治療薬の皮下注射(トルリシティ皮下)を週1回していましたが、認知機能の低下により皮下注射の打ち忘れや内服忘れが目立つようになり、血糖値のコントロールが不良となっていました。血糖コントロールの改善・安定化を目的に訪問看護が開始になりました。

⽀援内容

訪問看護は週1回、体調管理、トルリシティ皮下注射、内服薬の管理を目的に看護師が訪問しました。内服薬の飲み忘れに対して、目のつく所に内服カレンダーに設置し、薬袋に日付けを記入してセットしています。訪問時、看護師が血糖測定しトルリシティ皮下注射を施行しています。訪問した際、ご本人・ご家族に対して、食事療法、運動療法、生活習慣の改善に向けて糖尿病教育を行っています。

利⽤後の経過

訪問看護が介入することで、糖尿病治療薬の皮下注射、内服の飲み忘れは改善しました。病院の定期受診を忘れる事があるため、受診日の朝に電話連絡することで確実に受診出来ています。糖尿病教育により食事や運動に注意して生活するようになり、血糖値は一定の範囲内にコントロールされています。

直腸癌にて人工肛門造設後のパウチ交換自立に向けた支援

事例

直腸癌にて人工肛門造設され、入院中にパウチ交換の練習を行ったが、「退院後に自分で行えるだろうか?、トラブル時の対処を出来るだろうか?」と不安を訴えていました。病院の医療相談員より、セルフケア確立に向けて訪問看護の依頼がありました。退院前に病院で退院時カンファレンスが開催され、ご本人・ご家族が不安に感じている内容の聞き取りを行い、訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

週に2回、人工肛門のパウチ交換に合わせて訪問し、実際の手技を確認しながらアドバイスを行いました。その他に、入浴後のケアの方法、便の性状や食事のアドバイス、皮膚トラブル時のケアの方法、便臭の悩みに対するアクセサリーの選定を行いました。

利⽤後の経過

訪問看護が介入することで徐々に不安が軽減され、訪問回数を週2回⇒週1回⇒月2回⇒月1回に減らしていき、人工肛門ケアに対する不安が無くなり、訪問看護の利用が終了となりました。人工肛門造設に伴うボディーイメージの変化に戸惑いがありましたが、一つ一つ不安解消に努めました。利用終了後に電話にて様子を伺いましたが、不安無くパウチ交換が行えています。

ご家族の協力・服薬カレンダーを利用し、高齢者の排便コントロールが確立されたケース

事例

脱水、心不全、腎機能低下、肺に水が貯留し、これまで3回入退院を繰り返していました。同居しているご家族の支援を受けながら生活していましたが、兎糞様の便(コロコロ便)で排便困難になることが多くなりました。下剤を内服し、排便困難時にレシカルボン坐薬を挿入していましたが、反応便がなくご自身での摘便や何本も坐薬を使用していることがありました。そのため、体調確認、排便コントロールを目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は体調管理、排便状況の確認、内服支援を目的に週2回の訪問が開始しました。訪問した際に腹部症状を確認しながら、排泄の支援(レシカルボン坐薬挿入、摘便など)を行いました。食事摂取量の低下はありませんが、水分摂取量が1日500ml以下のため、水分摂取の必要性を伝えながら1日1000mlの飲水を目標としました。自己管理が困難な様子がみられた為、ご家族に準備を依頼しました。内服薬は自己管理していましたが、残数が合わず、錠剤が床に落ちていることがありました。内服薬の飲み間違えや飲み忘れ、下剤量調節のため服薬カレンダーを使用し、ご本人・ご家族が解るように内服薬をセットしました。朝方や食事後に便意があるため、毎日レシカルボン坐薬1本を朝8時に使用し、便意促進や反応便の経過を観察しました。座薬を適切に使用する為、ご家族に管理を依頼しました。

利⽤後の経過

訪問看護を利用して1か月後、ご家族の協力で徐々に1日の水分摂取量が増え、レシカルボン坐薬を適切に使用する事ができました。服薬カレンダーを利用することで、下剤量の調節、内服が確立できました。レシカルボン坐薬を使用することなく排便が可能となり、便性状は兎糞様(コロコロ便)から普通便に改善しました。体調は安定し、排便がコントロールされ、経過を観察しています。