脳卒中により活動機会が減少したが、訪問看護の介入により一人で買い物や散歩など屋外活動ができるようになったケース

事例

3年前に脳卒中を発症され重度の右片麻痺となりました。家屋内の移動は杖と下肢装具を使用されていましたが、不安感から屋外に出る機会は減少し、一人で外出することはなくなりました。屋外での活動性向上を目的に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週に1回、理学療法士が訪問しました。家屋内で麻痺側の機能向上練習と屋外歩行練習を集中的に実施しました。ご本人の希望を確認しながら、屋外散歩の中で近所のコンビニやドラックストアで買い物する機会を設けていきました。

利⽤後の経過

歩行練習の継続で屋外歩行の自信がつき、1人で散歩をする機会が徐々に増えていきました。散歩が習慣化され、買い物も1人で出来るようになりました。ご家族から日用品や食料を買いに行く役割を与えられ、週に3~4回は買い物に出掛けるようになっています。

リハビリ介入後、屋外活動の拡大、自助具の使用で書字動作を獲得したケース

事例

脳出血を発症し、右不全麻痺となりました。運動麻痺は軽度で粗大運動は可能な状態でしたが、重度の感覚障害がみられていました。屋外歩行は可能でしたが、立ち上がりや移動時にふらつきがあり、筋肉の緊張や疲労の出現により長距離歩行は困難な状態でした。 右手の失調症状(振える)、痺れや感覚鈍麻から巧緻動作が不十分で、書字動作は困難な状態でした。屋外歩行の安定化、書字動作を獲得することを目標に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、理学療法士、作業療法士の訪問を開始しました。屋外歩行の安定化、体力向上として、筋力強化や動的バランス練習、屋外歩行練習を積極的に実施しました。また、麻痺側の筋緊張を緩和しながら上肢の協調性や手指の巧緻性練習を実施し、生活場面で麻痺側上肢・手指が使用できるように動作練習しました。書字動作は自助具を作成・調整しながら練習し、課題の難易度を変更していきました。運動習慣を獲得できるように、自主リハビリの方法を説明しながら実施状況を確認しました。

利⽤後の経過

訪問看護を開始してから4か月後、体力の向上、屋外歩行の安定化から、通所サービスの利用を開始しました。運動は習慣化され、毎日4~6kmの散歩、自宅内で筋力トレーニングに取り組んでいます。動作時に麻痺側上肢・手指の筋緊張・失調症状を抑制できるようになり、生活場面で麻痺側の使用頻度は増加しています。書字動作は自助具を継続して使用する事で、実用的な書字動作を獲得しています。今後は余暇活動として庭作業ができるように支援していきます。

退院後リハビリを継続し、身体機能向上できたケース

事例

くも膜下出血を発症し、病院でのリハビリ後に自宅退院しました。退院時、左片麻痺、注意機能の障害あり、自宅内は車椅子介助で移動、寝返りや起き上がり等の基本動作、日常生活動作全般に見守り~軽介助が必要でした。構音障害、嚥下障害もあり、食形態の工夫やコミュニケーションに配慮が必要でした。退院後は「ご自宅での日常生活動作の安定」と「自分でできる事を増やす」を目標に訪問看護が開始となりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、看護師、理学療法士の訪問を開始しました。 自宅内の動線上で車椅子駆動練習を実施し、移乗や排泄、更衣などの動作練習を実施しました。転倒対策、生活動作の自立度向上として家具の配置変更や福祉用具を導入しました。また、短下肢道具の調整・作成を支援し、移動補助具を活用しながら歩行練習を実施しました。 思った言葉がスムーズに出ない事や身体状況・今後の生活に関する不安や解決方法に対する戸惑いに対して、十分に傾聴し適切な方法を提示しながら支援を継続しました。

利⽤後の経過

訪問看護を開始してから2か月後、起き上がりや立ち上がりが可能となり、見守り介助は必要ですが、歩行器で歩行できるようになりました。施設内職員と相談し、自室や食堂までの移動を車椅子から歩行器移動に変更し、歩行の機会を増やしていきました。開始から8か月後、歩行練習の継続により歩行器から杖歩行に変更し、施設内の移動は自立しました。屋外歩行は杖を使用して見守りで500m以上歩けるようになり、施設からタクシーを利用してご本人の自宅で過ごしたり買い物に行くことが出来るようになりました。

小児麻痺、脳出血後遺症があり、人との関りが苦手で清潔保持困難であった利用者の入浴支援に至るまで

事例

人との関りが苦手で家族以外は受け入れの拒否があり、ひきこもり状態でした。全身乾燥・落屑・皮膚トラブル箇所が多数あり、足の爪は伸び切っている状況でした。ご家族は十分に清潔援助できず、月に1度自力でシャワー浴している状況で清潔は保持できていませんでした。脳出血後遺症(右片麻痺)、小児麻痺(左片麻痺)から日常生活動作や歩行は不安定な状態でした。訪問看護は体調確認、保清、リハビリを目的に開始しました。

⽀援内容

初回訪問時、皮膚状態の改善が必要な旨をご本人・ご家族に説明し週1回の訪問看護にて清潔援助を行う必要があることを伝えました。訪問看護に対して当初拒否的で、清潔援助は難しく介入を拒否していました。まずは足を温タオルで保清し、爪切りを行いました。次に爪は硬く足浴することで柔らかくして切ることを伝え、足浴を浴室で行うようにしました。看護師が訪問する場所を居間から浴室空間へ移行していきました。足の爪や皮膚状態は改善された為、シャワー浴の提案を行うと「入ってみたい」とご本人から希望され、シャワー浴介助へ移行しました。清潔を援助することで頭皮の乾燥や瘡蓋・発赤・湿疹、耳周辺にみられていた乾燥・亀裂・出血、全身の皮膚接触面の発赤・ただれ・出血などの皮膚症状は改善されました。その後「これから寒くなるから、浴槽に入って温まりたい。」と希望があり、福祉用具の選定・動作確認を理学療法士と行い、現在は浴槽にて入浴されています。

利⽤後の経過

皮膚の清潔が保たれ、皮膚症状は増悪なく経過しています。現在、週1回の訪問看護での入浴を心待ちにしています。毎回のように「本当にありがとうね!よくやってくれている。感謝している。」とご本人よりお言葉を頂いています。ご家族からは、「こんなに他人に心を開く人ではなかったし、看護師が来るようになってから変わった。清潔援助は家族もできなかった部分だったので本当に助かっている。」と仰ってくれています。

高次脳機能障害、運動失調を呈する患者に対して介入することで活動範囲が拡大し調理活動が可能になったケース

事例

小脳梗塞を発症した60代女性。発症から6か月後、医療機関でのリハビリ後に自宅退院しました。左上下肢の運動麻痺、失調症状(振える)があり、高次脳機能障害(注意、記銘、判断能力低下)がみられていました。日常生活活動は自立され、独歩での移動は可能でしたが、段差で膝折れが生じる場面あり、自宅の施錠忘れや自宅周囲の道が解らず迷うため一人での外出は困難な状況でした。刃物使用や火気使用は怪我や事故の危険性があるため、家事全般はご家族が行っていました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、理学療法士と作業療法士が訪問しました。生活動作の自立、主婦としての役割の再獲得を目標に機能面の介入(失調症状に対する機能練習)、高次脳機能障害に対する学習療法、未獲得の日常生活動作や家事動作・調理動作の練習、安全に屋内・外移動を行うための動作練習と指導を実施しました。

利⽤後の経過

6か月間の介入で失調症状は改善し、筋力と体力が向上しました。高次脳機能障害は残存していますが、動作練習の反復による学習効果から施錠忘れや道に迷うことがなくなり一人で活動できる範囲が拡大しました。現在は調理活動の自立を目標に献立立案、買い物、調理まで一連の流れを練習しています。また、交通機関を利用して友人に会いに行けるよう、近隣の交通機関までの歩行練習も行っています。

ガーデニングがしたいという希望を叶え、趣味活動再開をしたケース

事例

脳梗塞右片麻痺、医療機関から自宅に戻るため、機能訓練や生活動作の練習をしてきました。退院後、自宅で趣味のガーデニングを再開したいとずっと思っていましたが、ガーデニングに必要な動作練習はしないまま退院となりました。「何とかガーデニングができるようになりたい」と希望があり、リハビリを目的に訪問看護が開始になりました。

⽀援内容

訪問看護は週2回、片麻痺の機能回復と趣味活動再開の目的で理学療法士が訪問しました。機能訓練・生活動作練習と同時に、ガーデニング再開に向けて実際に庭に出てどのような作業をしていたのか詳しく聴取しながら動作を確認しました。立位では転倒の危険性があるため、座って作業するために、低い台への着座・立ち上がり練習、四つ這いで作業できるように膝サポーターを使用しながら動作練習を実施しました。また、庭まで安全に移動するため、屋外歩行練習を実施しました。

利⽤後の経過

ご主人に動作の見守りを協力して頂き、右麻痺側を補助手として活用しながらクワやシャベルなどの園芸用具を使用することができ、草取りや花を植えたり簡単なガーデニング作業もできるようになりました。現在は一人で庭に出る事ができるようになっています。 ガーデニング再開が、ご本人の自信になり季節ごとに庭の花を見て楽しんでいます。次は、ミシンを使ってみたいと意欲的に生活し、ご本人の活動を支援しています。